臣松之以為
葛洪所記,近為惑眾,其書文頗行世,故撮取數事,載之篇末也。神仙之術,詎可測量,臣之臆斷,以為惑眾,所謂夏蟲不知冷冰耳。
(漢籍電子文献資料庫三國志 1426頁 ちくま8-086)
解説
63巻の評の部分には、何故か裴松之先生がこれでもかと志怪系の人物の伝を付記されています。楽しそうねしかし。一応その人物を紹介しておくと、まず趙達伝の末尾に付記した人物が皇象・嚴武・宋壽・曹不興・鄭嫗・葛衡。そして評のほうに付記した人物が葛仙公・姚光・謎の覡者・介象。中でもラストに挙げた介象のエピソードは葛洪『神仙伝』に載るものですが、身を隠す術を操ったり、野菜を急速に成長させる術だとか、海の魚を宮殿の池で釣り上げたりとか、遙か蜀の地に使者をワープさせたり引き戻したりとか言った超常的な技を決めています。
これに対して裴松之先生、いつもの強気な姿勢は何のその、はじめに「いやいや葛洪の本がうさんくさいのは言うまでもないことだけど」と前置きはするものの、正直わし神仙の術について詳しくないし一概に否定もしきれんよね、と仰います。それは言うなれば夏場に生きる虫が冬の水の冷たさを知らないようなものだ、と、神仙の術に関する内容については無条件で白旗を揚げておられます。